トロントの音楽学校の一つにRoyal Conservertoryがあり、そこでシリアからの難民のクラリネット吹きがコンサートをやるという情報を数日前に発見した。ヨーヨーマのシルクロードアンサンブルのメンバーでもあるKinan Azmehという人だ。ただチケットはsold outになっていて、当日キャンセルが出るかどうかに賭けることにして、出かけてみた。歩いて30分ぐらいの距離。途中でトロント大学の構内を抜けるルートだ。

トロント大学の構内は緑豊かで広々として、古い洋館そのままの建物も多い。

ともかく歩いて行った先がconservertoryなんだけれど、チケットの売り場のお姉さんに訊いたらやはりsold outだという。なんとかならないかと粘るけれど、最終的には、ないものはないのよ、みたいなニュアンスで肩をすくめられ、仕方なく諦めた。さて。

トロントにはジャズクラブがいくつかあり、検索すると上位に出てくるのはThe Rexというヴェニュー。実際、この日の夜のセットで見てみたいプレーヤーが出る予定だったんだけど、なぜか数日前にキャンセルになってしまった。観てみたいなと思ったものが立て続けにかなわず、刺すような日差しの中を合計1時間歩いたせいで、体がだるくなった。しかし、なんとなくライブを観たい欲が残っていたので、近くにあるヴェニューに行ってみることにした。ニューオリーンズジャズをメインとするヴェニュー。Grossman’s Tavern。ここはいわゆる投げ銭制を70年近く続けてきたお店らしい。

チャイナタウンのはずれにある会場が近づくと、確かにニューオリンズジャズの演奏が聞こえる。その音が聞こえる建物の前に人がいて開いている窓から中を覗き込んでいる。


まあ窓の外からでも十分演奏が聴けちゃうので、それでもいいかと思ったが、せっかくだから中に入ってみることにした。

カウンターにはステージに背を向けてビールを煽る男たち。そこからはステージは柱に隠れて観づらいが、音ははっきりと聞こえる。ステージ近くは40人ぐらいのお客さんで埋まっている。ステージの壁には出演者の黄ばんでしまった顔写真がおびただしく貼られ、テーブルもだいぶくたびれて、ごちゃごちゃした感じ。コーヒーを頼んで、手頃なテーブルに座りしばし眺める。実は、僕はニューオリンズジャズをライブでちゃんと訊いたことがない。バンドはThe Happy Palsという名前で、ベース、ピアノ、バンジョー、ドラム、クラリネット、トランペット、トロンボーンという編成。トランペットのおじさんとトロンボーンのおばさん以外は比較的若いプレーヤーのようだ。世代交代をしつつバンドが息づいているのだろうね。

演奏そのものというよりは会場の雰囲気が良かった。お客さんの年齢は60代あたりの感じが多いかな。おそらく若い頃にこんな音楽とともに、友達と飲み明かし、恋をし、思い出を作り、たくさん笑ったんだろう。音楽が始まると立ち上がって踊り出す。座ってニコニコしているのもいる。酔いつぶれて目がうろんとなってるのもいる。

僕はこういう音楽をやらずに育ったし、今後も正面から取り組むことはないのだと思うが。たとえ形は違えど、こんな風に、聴く人の心と体に染み込んでいく音楽を作っているか?と自分に問いかけながら、日が落ちてようやく涼しい風が抜けるチャイナタウンを歩いて帰った。

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